ピーク・エンド・ラバーズ
たったさっき教室から出る前、クラスメートがしていた会話。
スカートを短く折って、華やかにメイクをして。きっと一度は津山くんと「そういうこと」をしたんだろうなという女子たちが、ぼやいていた。
残念って、そういう感じって、なに。
八つ当たりのような気持ちが湧き出て、私は逃げるようにここまで早足でやってきた。
そしてまだまだ、最悪なのは終わらないらしい。
「や、ごめん。その……気持ちは嬉しいんだけど……」
バス停の前で二月十四日特有の告白イベントを受けているのは、津山くんに他ならなかった。
帰りのホームルームが終わった後、女の子に呼ばれて教室を出て行った彼は、そのまま戻って来なくて。何で私が待ってやらなきゃいけないんだ、と腹が立ったから、帰ることにした。
「好きな子、いるんだ。だからごめん、君とは付き合えない」
だったら振る相手に優しく笑いかけるな、ばか。自分から頼んできたのに、私より先に帰るな。本当に、ばか。津山くんはばかだ。どうしようもないくらい。
さっきからずっとむかむかしている。それもこれも全部、津山くんのせいだ。
「……分かりました。聞いてもらって、ありがとうございます」