ピーク・エンド・ラバーズ
嫌いじゃないよ。もうそれは認めたの。
でも、だって、――私、津山くんに「好き」って、一度も言われてない。
「いや……何か、ごめん……その、怒ってる?」
「別に。ただ話し込むなら邪魔にならないところでやって欲しいなって思っただけ」
むかむか、いらいら。おさまらない。
私にチョコくれって言ったくせに、他の女の子に呼ばれたらすぐ行くんだ。私のこと好きなくせに、告白された子には優しくするんだ。
津山くんってやっぱり、ヘタレだ。八方美人だ。
嫌われるのが怖いんでしょう。だから私の顔色を窺って、遠慮してる風に見せかけて、絶対に自分の手の内は明かさない。
「……西本さんのこと、待とうと思って。教室だと迷惑かなって思ったから、ここで待とうとしたんだけど……」
「へえ」
「ごめん……その、まさかここであんな風に、告白、……されると思ってなくて」
弁解しているつもりなんだろうか。また申し訳なさそうに眉尻を下げて、私のご機嫌取りでもするの?
「ふーん。モテモテだね」
感情も何もこもっていない調子で返事をすれば、津山くんは慌てて顔を上げる。
「俺は……! 俺は、西本さんからモテればそれでいい……」