ピーク・エンド・ラバーズ
勢いよく切り出したのに、言葉尻は頼りなく消え入った。
私がつと彼の方に視線を向けると、ばちりと目が合う。津山くんは途端に頬を赤く染めて、マフラーに口元を埋めた。
へーえ。ふーん。そうなんだ。
平常時の自分ならうっかり動揺してしまっていたかもしれないセリフも仕草も、今はただ言い訳にしか聞こえない。
何だそれ。何なんだ。そういうことは言えるくせに、「好き」って絶対に言わないよね。
こっちの理性を崩すだけ崩して、最後の一線は私頼み? 冗談じゃない。ふざけるのも大概にしろ。
そもそも、津山くんと私じゃ何一つ噛み合わないしつり合わない。
いくら今の津山くんが真剣だからって、ずっとふらふらしていた彼がこの先もずっと私に真剣でいてくれる保証もないし。むしろ信用問題でいうなら全然足りないし。
一時の感情に流されて、後になってから蓋を開けたら、やっぱり駄目でしたーとか。そういうのは本能をコントロールできない動物のすることだ。
なのに、なのに。
「はい」
持っていた紙袋を、津山くんに押し付ける。
彼はぱちぱちと目を瞬かせ、呆然とこちらを見つめるだけだった。
「いらないならいいよ」
「い、いる! えっ、これ俺に? だよね?」