ピーク・エンド・ラバーズ
4
「西本さん、クラス一緒?」
新しい教室に入る前。背後から声を掛けられて振り返る。
一年前と比べてだいぶ暗くなった髪色と、さほど着崩すこともなく第一ボタンだけ開いた制服。さすがに三年生ともなると現実を見据えたのだろうか。
津山くんは私の横に並ぶと、「よろしく」と頬を緩めた。
「……津山くんって、国公立組だったんだ」
「うん、まあ頭そんな良くないけど……頑張ろうかなって」
私と津山くんが所属することになる三年四組は、文系のクラス。
専門学校や短期大学への進学を考えている人は大体、三年一組になる。四年制大学を志望する人とでは、やるべき授業が違うからだ。
津山くんと進路のことについて話したことはないけれど、正直に言って彼はあまり成績が良くない。勉強自体もそこまで好きではなさそうだな、と勝手に思っていた。
――そして、その勝手なイメージは大いに当たりだった。
「あ~~~またEか~~~」
もはや何をするにしても「高校最後の」という修飾語がつく日々も、ばたばたとしている間に夏へと移り変わった。
三年生になってから毎月行われる模試。返却された結果の用紙を前に、津山くんが嘆いている。
「はあ? お前、第一志望永北大にしてんの?」
「ちょ、勝手に見んなよ!」