ピーク・エンド・ラバーズ
うわ、と思わず呟いてしまった。
しっかり彼にも聞こえてしまったのか、「うわって何、傷つくわー」と大袈裟に眉尻を下げられる。
「いいよ、すぐそこだから。彼女にも悪いし」
「え~、彼女って? いないの知ってるでしょ」
「さっき電話してたの、彼女でしょ?」
「いやさっきのはマミちゃん」
「それは知らない」
誰だ、マミちゃんって。心底どうでもいい情報を得てしまい、うんざりする。
津山くんはもう通常時の笑みに戻っていて、「いーから送らせてよ」と押し切った。
駅へは本当にすぐ着いて、ほんの僅かな非日常だった。
津山くんが車道側を歩いてくれたり、歩幅を合わせてくれたり、そういったことをされる度に何だかむず痒い気持ちになったし、いちいち気が付く自分にも嫌気がさす。
「じゃ、また明日!」
「……うん。ありがとう」
一応お礼を述べれば、津山くんは「どーいたしまして」と肩を揺らし、手を振りながら背を向けた。
バスに乗り込んだ後、彼からメッセージが届く。
『報告! 二人、無事に付き合うことになったって!』