ピーク・エンド・ラバーズ


恐らく狸寝入り。それは分かっていたから、ため息をついて視線を落とす。

彼の手には、一枚の用紙が握られていた。模試の結果だ。こっそり見たら、C判定だった。


「……え、すごいね。こないだまでEじゃなかった?」


C判定なら五分五分、合格率は50%だ。可能性はある。
だったら尚更こんなところで休んでいる場合じゃないだろう、と肩を竦めた時だった。


「…………やっぱ、変えた方がいいのかな」


くぐもった声。やけに弱気な口調が、耳朶を打つ。


「変えるって、志望校を?」

「……うん」


どうやら津山くんは相当落ち込んでいるようだ。赤点を取っても笑い飛ばしていた一年前の姿はどこへやら、随分なへこみようである。


「さっき、森先生にも言われて。悪いことは言わないから、下げろって……」


まあ確かに、それは正論だ。もし私が津山くんだったら、間違いなく志望校を下げる。受験で冒険はしたくない。


「津山くんは下げたくないの?」

「何ていうか……森先生なら無理でも『頑張れ』って言ってくれる気がしたんだけど、そうじゃなかったっていうか」

「それは……だって、進路のことだから。森先生も、先生だし」

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