ピーク・エンド・ラバーズ
基本的に大雑把で楽観的で適当。それが森先生だった。
津山くんの言いたいことも分からなくはないけれど、きっと先生も心配しているのだろう。
「うん、そうだね。……考え直す」
そう呟いた彼の声が今にも消えてしまいそうなくらい頼りなくて、私は思わず「ねえ」と彼の肩を掴んだ。
そのまま半ば強引に顔を上げさせて、真正面から目が合う。津山くんの瞳は、いつになく不安定だ。
「な、西本さ……」
「津山くん、本当は変えたくないんでしょ」
私が指摘すると、彼はそろそろと視線を逸らす。
「……諦め悪い?」
「そういうことじゃなくて。先生たちはさ、もちろん普通に心配してくれてるのもあるけど、高校の進学率上げるためにも私たちを国公立に行かせたいんだよ。言ってる意味、分かる?」
困惑したように首を傾げる津山くんに、私は続けた。
「だからつまり、下手に挑戦して難関大に落ちるより、確実に受かってくれた方が有難いってこと。どの先生も、E判定なのにそのまま受けろなんて言わないでしょ」
「それは、そうだけど……」
「先生はともかく、親御さんがいいって言ってくれるなら、自分の受けたいところ受けるべきだと私は思う。だってこれ、自分の人生だよ」