ピーク・エンド・ラバーズ
張り詰めていたものが弾けてしまったかのように、彼は次から次へと涙を零した。必死に口元を押さえて、背中を震わせ、嗚咽を堪えて。
情けないとは、思わなかった。みっともないとも、思えなかった。
だって、みんなそうだから。一人黙々と参考書に向かいながら、本当にこれでいいのかと漠然とした不安に何度も襲われる。なかなか寝付けない夜もある。
でもそうしないと、永遠に春はやってこないのだ。
「うん。いいよ」
我慢しなくて、いいよ。今日のカッコ悪い津山くんのことは、明日にはきっと忘れてる。みんな自分のことで精一杯。私もそう。誰でもそう。
低い泣き声が、肌寒い教室に静かに響く。その間、私も自分の中にある拭いきれない不安を、代わりに吐き出してもらっているような気分で聞いていた。
「落ち着いた?」
暗い窓の外をぼんやりと眺めていたら、やがて嗚咽は止んだ。ず、と鼻を啜る音が次第に多くなってきたから、ティッシュを取り出して彼に差し出す。
「ん。ありがと……」
「それ全部使っていいよ。私まだ持ってるし」
こくりと頷いて、津山くんがもう一度「ありがとう」と涙目で私を見上げる。少女漫画のヒロイン並みの上目遣いで、笑ってしまった。
「そ、そんな笑わなくて良くない……?」
「いや、ごめん。笑ってない、全然笑ってないから気にしないで」
「嘘しか言わないじゃん……」