ピーク・エンド・ラバーズ
文句を垂れる余裕はできたらしい。
だったら大丈夫だな、と勝手に判断を下して、私は彼の腕を引いた。
「ほら、いつまでそうやってるの。帰ろう」
まだ鼻先が赤い津山くんを学校から連れ出して、コンビニに寄る。わけが分からない、という顔をした彼を店の外で待たせて、肉まんを二つ買ってから「お待たせ」と声を掛けた。
「え、何で……」
「泣いたらお腹空くでしょ? 私もお腹空いたから、付き合って」
時刻は既に十八時を過ぎている。普段は寄り道して買い食いなんてしないけれど、今日は許される気がした。
躊躇している津山くんに、無理やり肉まんを持たせる。ピザまんの方が好きなんだけど、とか言われたら殴るつもりだった、のに。
「いや、ちょっと……何また泣いてんの……」
あろうことか、津山くんは再びえぐえぐ泣き出した。今度はコンビニの前だから人目に付くし、物凄く気まずい。
「違っ、肉まんが、うますぎて……」
「まだ食べてないじゃん」
「ごめん……」
謝るくらいなら、頼むから泣き止んでくれないだろうか。彼の泣きポイントがいまいちよく分からない。それとも、一度涙腺が緩んだらなかなか締まらないタイプ?
「西本さん、」
「うん?」
「……ありがと。元気出た」
「それなら良かった」
泣きながら大きく肉まんを頬張った津山くんは、何度も「美味しい」と報告してきて、「良かったね」と返した私に、はにかむように微笑んだ。