ピーク・エンド・ラバーズ
*
「気まずいなあとか、思わないの」
三月の駅前、土の匂い。
走ってきたのか、少しだけ息を弾ませる津山くんに、私は不服を述べる。
「普通合格発表って一人で見に行くもんだよ。慰めろって言われても、無理だからね」
今日は公立大学の合格発表日。卒業式から早一週間経ち、外は春の陽気だった。
「俺が落ちる前提なのやめて……」
「事実じゃん」
津山くんは結局、私と同じ永北大を受けたらしい。らしいというか、試験当日に会場で見かけたから、そうなんだけど。
彼はなぜか「一緒に合格発表を見に行って欲しい」と頼み込んできて、最初はもちろん断った。理由は既にあげた通り、気まずいし、私だって絶対に受かる保証はないから。お互い結果が奮わなかった時のために、自衛として一人で見に行くのがマナーだと思う。
諦めが悪い、という彼の特性を忘れていたのが仇となった。断ってから一時間おきにメッセージを投げてくるし、私が頷くまでやめないと言う。あまりのしつこさに、半分キレながら了承した。
「うわ、人だかりすごい……」
駅から大学までは程近く、数分で敷地に着いた。早くも掲示板に群がる受験生たちが、ざわめいている。
「じゃあ津山くんは、ここで待ってて」
「え?」
「気まずいなあとか、思わないの」
三月の駅前、土の匂い。
走ってきたのか、少しだけ息を弾ませる津山くんに、私は不服を述べる。
「普通合格発表って一人で見に行くもんだよ。慰めろって言われても、無理だからね」
今日は公立大学の合格発表日。卒業式から早一週間経ち、外は春の陽気だった。
「俺が落ちる前提なのやめて……」
「事実じゃん」
津山くんは結局、私と同じ永北大を受けたらしい。らしいというか、試験当日に会場で見かけたから、そうなんだけど。
彼はなぜか「一緒に合格発表を見に行って欲しい」と頼み込んできて、最初はもちろん断った。理由は既にあげた通り、気まずいし、私だって絶対に受かる保証はないから。お互い結果が奮わなかった時のために、自衛として一人で見に行くのがマナーだと思う。
諦めが悪い、という彼の特性を忘れていたのが仇となった。断ってから一時間おきにメッセージを投げてくるし、私が頷くまでやめないと言う。あまりのしつこさに、半分キレながら了承した。
「うわ、人だかりすごい……」
駅から大学までは程近く、数分で敷地に着いた。早くも掲示板に群がる受験生たちが、ざわめいている。
「じゃあ津山くんは、ここで待ってて」
「え?」