ピーク・エンド・ラバーズ



「気まずいなあとか、思わないの」


三月の駅前、土の匂い。
走ってきたのか、少しだけ息を弾ませる津山くんに、私は不服を述べる。


「普通合格発表って一人で見に行くもんだよ。慰めろって言われても、無理だからね」


今日は公立大学の合格発表日。卒業式から早一週間経ち、外は春の陽気だった。


「俺が落ちる前提なのやめて……」

「事実じゃん」


津山くんは結局、私と同じ永北大を受けたらしい。らしいというか、試験当日に会場で見かけたから、そうなんだけど。

彼はなぜか「一緒に合格発表を見に行って欲しい」と頼み込んできて、最初はもちろん断った。理由は既にあげた通り、気まずいし、私だって絶対に受かる保証はないから。お互い結果が奮わなかった時のために、自衛として一人で見に行くのがマナーだと思う。

諦めが悪い、という彼の特性を忘れていたのが仇となった。断ってから一時間おきにメッセージを投げてくるし、私が頷くまでやめないと言う。あまりのしつこさに、半分キレながら了承した。


「うわ、人だかりすごい……」


駅から大学までは程近く、数分で敷地に着いた。早くも掲示板に群がる受験生たちが、ざわめいている。


「じゃあ津山くんは、ここで待ってて」

「え?」

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