ピーク・エンド・ラバーズ
そっちが勝手についてきたんだから、気遣いとかはしてやるつもりはない。
はっきり告げれば、津山くんは分かりやすくほっとした顔で息を吐く。
「おめでとう、良かった……」
「あはは。私のこと言ってる場合?」
「仰る通りで……」
途端に顔をしかめた彼の背中を、ぐい、と押し出す。
「安心して。泣いて戻ってきても置いて帰ったりしないから」
むしろ津山くんの泣き止ませ方に関しては、プロフェッショナルと呼んでもらいたい。泣かせた回数も同じくらいだけど。
私の励ましなのか何なのか微妙な発言に、それでも彼は腹が決まったようで。大きく一度頷き、歩いていった。
その背中を見送ってから、私は電話を掛ける。
「あ、もしもしお母さん? いま見てきたよ。受かってた」
「ほんと!? 良かった……! 優希、加夏受かったって!」
二個下の弟は絶賛反抗期だけれど、私と同じ高校に行きたいと言って勉強を頑張っていたような可愛いエピソードもあったりする。今日に至っては、なぜか私よりも優希の方が朝からそわそわしていて、ああ気にしてくれているんだなと嬉しかった。
私と似て愛想がいい方ではないから、誤解されやすいのが残念だ。
「なに、姉ちゃん受かったの?」