ピーク・エンド・ラバーズ


きっと狼谷くんから連絡が来たのだろう。分かりきってはいたけれど、こうして文面で見ると安心した。

長い一日だったな、と静かに瞼を閉じ、窓に頭を預ける。
すると、再びスマートフォンが振動して、新着メッセージの存在を知らせた。


『ところで、西本さんってキノコ派? タケノコ派?』


一体何の話だろう。連投してまで続けるような話題でもなさそうだけれど。


『送る相手間違えてるよ』

『いや俺、ちゃんと西本さんって打ったよね!? めんどくさいからってスルーしないでよ』


そんな言葉が続いて、写真が送信された。コンビニでも寄ったのか、チョコ菓子のパッケージが二つ映されている。
キノコかタケノコか、という質問は、そういうことだったらしい。


『タケノコかな』

『俺もタケノコ! ってことで買って帰りまーす。西本さんも帰り気を付けて!』


結局、私に聞いた意味は皆無に等しい気がする。中身なんてない、すっからかんなやり取りだった。
だけれど、この他愛もないやり取りは今に始まったことではない。彼と連絡先を交換して以来、親友の恋路を応援するべく情報交換をしていた。津山くんはその終わりに、いつも下らない話を投げていく。


『今日は色々とありがとう』


知らずに絆されていたんだろうか。
自分の指先はそんなメッセージを送信し、今度こそ私は目を閉じてバスに揺られた。

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