ピーク・エンド・ラバーズ
二人とも受かったはずなのに、何となく気まずいのはどうしてなのか。
仕方なく彼に促して歩き出す。
「待って」
その声が引力だった。腕を掴まれて、反射的に振り返る。
「俺……今日、西本さんに言おうと思ってたことがあって」
じっと私の瞳を見つめてくる彼が、瞬きをする度に空気の揺れを感じた。
掴まれた腕と、交わる視線と、呼吸音。全身で理解している。いま彼が、何を言いたいのか、今から彼が、何を言おうとしているのか。
「俺、ずっと……えっと、二年の時から西本さんのこと、」
津山くんの眉間に皺が寄る。瞳が揺れる。声が、震えている。
「俺、ほんとに、」
きゅ、と唇を噛んで、彼は口を噤んでしまった。
五秒、十秒、二十秒。待てども待てども、その先は紡がれない。
目の前には、今にも泣き出しそうな顔をした男子高校生――ただし既卒――が一名。
彼の指先が食い込む。そんなに噛んだら痛いでしょ、っていうくらい、唇を白くなるまで噛んで噛んで噛み締めて。
「津山くんさ、」
ため息とともにその言葉は漏れ出た。
びくりと肩を震わせた津山くんが、怯えたようにこちらに視線を移す。
「私のこと、好きでしょ」