ピーク・エンド・ラバーズ


ない。まじでない。本当にあり得ない。割り切れない、じゃないわ。覚悟できてないのはどっちだよ!
さすがに怒りを我慢できず、慌てる津山くんに詰め寄る。


「それはっ……や、だって西本さん、俺に聞いたじゃん! 『好き?』って聞いたから、俺答えたじゃん!」

「あんなの答えたうちに入んないでしょ、『うん』だけだったら誰でも言えるわ! 馬鹿!」


このヘタレ、意気地なし、幼稚園児!
下から睨みつければ、津山くんは「う、」と黙り込んでしまう。それでもまだ言わないんだ。へえ、ふーん。もういい。


「帰る!」

「えっ」


何なの、ほんと。人を馬鹿にするのも大概にして欲しいんですけど!
踵を返して、早足で来た道を辿っていく。


「待って! ごめん、ほんと、お願いだからちょっと待って」


待つか、馬鹿。私は散々待った。これ以上待たせるとか、もう懲役五億年だ。
ほんっとにヘタレ。あんなにチャラチャラしていた津山くんはどうしたんですか。あんたは一体何を学んだわけ。


「好き!」


かなり後ろの方から、そんな叫び声が聞こえた。
遅いよ。もう遅い。今更言ったところで、私が言わせたみたいなもんじゃん。そんな義務的な告白、全然欲しくない。


「西本さん、好き!」

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