ピーク・エンド・ラバーズ
しゃくりあげる彼が、私の目を捉えた。――ああ、捕まった、と。頭の片隅で思う。
「俺っ、西本さん、が、好きでっ」
「……うん」
「ほんとの、ほんとに好きで……!」
「うん」
喋れば喋るほど、彼の目から涙が溢れてくる。
さっきから私たちの横を、申し訳なさそうに、あるいは腹立たしげに、何人も通り過ぎていく。
津山くんは必死に自身の頬を拭って、それから、震える声でしっかりと告げた。
「西本さんが、好きです……」
もう、なんだ、それ。
好きって言われてない。そう訴えたら、今度は馬鹿の一つ覚えみたいに「好き」しか言わなくて。
走って泣いて追いかけてきて、全然カッコ良くないよ、ねえ、津山岬。
そんなになりふり構わず、私のこと好きでいてくれる? これからも、ずっと?
「堂々巡りだね」
心底、馬鹿な人だなあと思う。
くすくすと笑う私に、彼は困り果てた顔で抗議してきて。
「ひどっ、俺、真剣に言ってんのに、」
「うん、ごめんごめん。よくできました」
「馬鹿にしてるじゃん……」
そうだね。馬鹿にはしてるかなあ。だって、馬鹿だ、本当に。
でも、それくらいの方が、信じ切るにはちょうど良かったみたいだよ。
「返事は?」