ピーク・エンド・ラバーズ
私が問いかけると、津山くんはきょとんとした顔でこちらを見返してくる。
「返事、聞かなくていいの?」
目を逸らした彼は、とことんヘタレのようだ。
両手を伸ばして、津山くんの頬を挟む。ぶへ、と情けない声を上げた彼を、思い切り笑ってやった。
「あはは。イケメンが台無しだねえ」
それでいいよ。カッコつけないで。無理に甘いセリフなんて、吐かなくていいから。私を安心させてくれるだけの気持ちがそこに、確かにあれば十分だから。
「私はね。多分なんだけど、津山くんのこと好きだよ」
まだ私はきっと、津山くんみたいになりふり構わず走っていけるほど、好きじゃないかもしれない。
でもこんな津山くんを放っておけるほど、理性は仕事をしてくれていないようで。
「…………え?」
あり得ない、とでも言いたいのだろうか。
こて、と首を傾げて三十度。呆然と私を眺める津山くんに、こっちまで呆れてしまう。
「だから、好きだって言ってる」
「……誰を?」
「馬鹿なの?」
ああいや、聞くだけ無駄だった。そしてこの人にはどうやら、大事なことは二回言わないといけないらしい。
「私は、津山岬が好きです」