ピーク・エンド・ラバーズ
Seek Right Vagrans

1



「えー……つまりピーク・エンドの法則というのは、最も感情が高ぶった瞬間と最後の印象によって、記憶の全体的な評価が下されるということになります。したがって、『終わりよければすべてよし』とはよく聞きますが、これは科学的に証明されているんですねー……」


淀みなく続く教授の声が、子守歌に聞こえる。昼食後の三コマ目。これが一番眠い。
かくん、と無意識のうちに船を漕いでしまって、慌てて頭を振った。

講義は既に終盤だったようで、時間を確認した教授が早口になる。
今日のまとめを喋り出した途端、今まで微動だにせず受動的に話を聞いていた周りの人たちも、一斉にメモを取り始めた。


「では、今日はここら辺で終わりにしましょう。次回は話しきれなかった部分、まあ蛇足ですが、ちょっとそこに触れてから、新しい箇所に入りたいと思います」


そんな締めの挨拶が飛び出したところで、隣に座っていた友人に腕をつつかれる。
つと視線を向ければ、芽依(めい)が悪戯っ子のように目を細めていた。


「めっずらしー。加夏、寝てたね。まあツッチーの話はマジで蛇足ばっかだからしゃーないけど」

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