お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~

 それから1週間。

毎朝、朝の苦手な藤丸さんよりも早く起きて、朝ごはんを作る。

 

今朝は、玄米ご飯と豆腐の味噌汁と卵焼きってごく普通の和食の朝ごはんを作って、アラームが鳴るより先に部屋をノックすると藤丸さんはもうすでに起きていた。

 

「おはよう。琴理ちゃん。朝ごはんのいい匂いで、起きた」

そう言って大きく伸びをした後、笑いながら私の横を通り過ぎる藤丸さんから、わずかにムスクの香りがしてあの夜の出来事を鮮明に思い出す。

 

 

いつものように全てを美味しいと食べ終え、いつもの凛々しいスーツ姿で出掛けた藤丸さんを見送ると、掃除と洗濯を終える。

 

この数日、ロボット掃除機は部屋の隅っこに追いやられ、私がスイッチを切ったので出番すら与えられていない。

 

 

夜ごはんの献立を考えながら、近所の店を散策したり、駅の裏通りの小さな商店街の気さくなおばちゃんと仲良くなったり、この生活がなんだか楽しいとも感じ始めていた。

 

なにより、誰かのために料理や掃除することが幸せだと感じるなんて思わなかった。

 

 

今日も藤丸さんの笑顔が見れるかな、なんて考えるとちょっとだけ胸の鼓動が速まる。

 

 

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