お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~
◆◆
「ゲーム、藤丸さんが勝ちなんじゃないの?」
「えっ?」
電話越しに面白そうに言う美夏の一言に、私は一瞬何のことか分からなかった。
ゲームってこと、この1週間はすっかり忘れていた。
「その様子じゃ、琴理はこの生活はゲームのことだって忘れていたでしょ?初日の警戒心なんて、もはや過去のことだし、かなり楽しんでいるみたいだし」
「楽しんではいるけど、好きになんてならない」
「そう?私は、時間の問題だと思うけど」
美夏はそう言ってまた楽しそうに笑っている。
美夏の仕事の愚痴も聞きつつ、電話を終える。
「好きになるのも、時間の問題か…」
思いがけず、美夏との会話を思い出し、自分の口からそんな言葉が出てきてしまったものだから、思わず頭を横に振った。
好きになんてならない。
3ヶ月経ったら、家に帰るんだから…。
胸の中で誓ってみたものの、思い浮かんでくるのは眩しいばかりに笑う藤丸さんの笑顔。
急に胸が苦しくなった気がした。