お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~
「今日はありがとうございました」
冷蔵庫にミネラルウォータ-を片付けていた藤丸さんに、お風呂から上がったばかりの私は頭を下げる。
「僕が琴理ちゃんにそうしてあげたかったからってだけ。今度は琴理ちゃんが行きたい場所に行こうか。考えておいて」
藤丸さんはそう言いながら、私にもう一度冷蔵庫を開けてミネラルウォーターを差し出してくれる。
私はそれをグラスに注ぎながら、リビングのソファへ座った藤丸さんの背中に話しかける。
「私、ずっと大学まで女子校だったので、男の人とデートしたことなくて。」
ふと、頭をよぎったのは桐谷課長のこと。
そういえば、桐谷課長と2人でいる時はいつもちょっとしたレストランからホテルってコースで、デートというものをしたことがなかった。
私にとって、それが桐谷課長との関係では当たり前になっていて、桐谷課長とデートをするということすら頭にはなかったのだ。
まぁ、桐谷課長にとって私はデートするにも値しない相手だったのだろうけど。
そんな事考えたら、ほろ苦い気持ちが一気に押し寄せてくる。