お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~
素直で居ることは幸せですか?
どのくらいキスしていたんだろう。
藤丸さんは私の顔を覗くように見つめてくる。
その瞳は揺らいでいて、私は無意識に藤丸さんの着ているシャツの裾をギュッと掴んでいた。
「ごめん…。忘れて。」
私のその行動に藤丸さんはハッと驚いたような表情を浮かべる。
そして完全に無防備になりかけた私に藤丸さんはポツリと呟くように謝ると、私の返事なんて聞きもせず自分の部屋に逃げるように戻っていった。
私はソファに倒れ込んだままの状態で、ぼんやりと天井を見上げるばかりだった。
藤丸さんの唇の熱も、あの苦しげに囁かれたバリトンボイスも、そして芳香なムスクの香りも当分は私の頭から離れそうにない。
「簡単に謝ったりしないでよ」
天井をぼんやりと見つめて、ため息と一緒に出てきた言葉に自分でも驚いた。
それと同時に頬を一筋の涙が伝ってしまう。
藤丸さんのキスよりも、藤丸さんの言葉に胸が苦しくなるほど傷ついていた。