お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~
別に謝って欲しかったわけじゃない。
それよりも「忘れて」と、苦しげに言われたことに、キスをなかったことにされてしまったような気がして辛い。
って、私はキスをなかったことにしたくないのか?
どうにか移動してきた自室のベッドでゴロゴロとしながら、自問自答を続けているうちに私は夢の中へと落ちていった。
その日、久しぶりにいつもの、名前のせいでいじめられる幼稚舎の頃の夢を見た。
藤丸さんと同棲が始まってから、初めてみた夢には男の子は出てこなくて、その悪夢から現実に引き戻してくれたのは、目覚まし時計の乾いた電子音。
いつものように、軽く身支度して2人分の朝食を作り、コーヒーを淹れる。
藤丸さんの大きな目覚まし時計のアラームがなる数分前に、いつものように藤丸さんの部屋をノックした。