お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~
「さっきの琴理ちゃん、耳としっぽが見えた気がした」
「なんですか、それ」
「主人の帰りを待つ小型犬って感じだった。帰ってきたらいきなり抱きついてきて」
食事も入浴も終え、寝る前のまったりとした時間にリビングのソファーでテレビを見る私の隣で、なにやら難しい本を読んでいる藤丸さんが私にからかうように冗談を言ってきたので、私は恥ずかしくなって頬を膨らませた。
「僕は、嬉しかったんだよ」
もうそんなこと言われると、嫌でも胸が高鳴る。
「それに、嬉しい時は嬉しいって、嫌な時は嫌って、素直な感情を現わしてくれた方がいいなって」
ズルイ。やっぱりズルイ。
大人げなかった行動だったと反省していたのに、その行動すら肯定して、しかも褒められるなんて思いもしなかった。
私は、また火がついたように顔に熱が帯びてきた。