お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~
過去は変えられないって幸せですか?


 ピピピピピピ。

 

無機質なアラームが鳴ると、私を抱きしめていた腕が離れて目覚まし時計の音が止まる。

ベッドからこのベッドの主を起こさないようにソロソロと静かに抜け出す。

 

寝室を出ようとドアノブに手を掛けたとほぼ同時。

「…おはよ」

 

背中に掛けられる少し擦れたバリトンボイスは朝からでも十分な色気を帯びている。

 

「おはようございます」

「琴理ちゃん、あと30分後に…」

 

「ふふ、分かってます。30分後に起こしますね。朝ごはん作ってきます」

 

この10日間ほどですっかり藤丸さんと一緒に寝ることにも抵抗は少なくなった。

 

初めの数日は抵抗してみたりしていたけれど、藤丸さんは私を抱きしめて眠るだけで、それ以上は何も求めてはこないし、藤丸さんの規則正しい寝息を聞いていると私も何故か安心して眠れるせいで、身体の調子もいつにもまして絶好調といったところ。

 

藤丸さんにとっては、ただの抱き枕替わりのようなものなんだろうな。

 

 

そう思ったら、なんだか胸が苦しくなった。

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