お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~
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「桐谷課長と何かありました?」
資料室の片づけを始めて数分、紗和ちゃんが私に鋭い質問を投げかけてきた。
「えっ?どうして?」
動揺しないつもりだったのに、急な質問に声が上擦ってしまう。
「だってぇ、桐谷課長は赤井さんばっかり仕事の依頼する時、気を遣っているんですもん。私なんて超~上から目線で言われるしぃ、怒られてばっかりだしぃ」
「そうかなぁ?」
少し頬を膨らませながら、膨大な資料をファイリングしていく紗和ちゃんを、横目に見る。
「そうですよ!!!赤井さんって気付いてないんですか?いつも桐谷課長は赤井さんだけ特別扱いしているじゃないですか」
特別扱いかぁ。
きっと桐谷課長は、私を特別扱いしているつもりはない。
申し訳なさそうに頼めば私が断れないこと知っているだけのこと。それはこの間までの3年間で桐谷課長が覚えた私を都合よく扱う術なのだろう。
傍から見れば、それが特別扱いに見えるのかと思うと、なんだか胸の奥がモヤモヤした。