お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~
私の中に押し寄せてきた思いは、浮かんできた梶原さんの可憐な笑顔に一緒に打ち消された。

ううん。打ち消されたんじゃない。自分で打ち消した。


現実に戻るだけ、藤丸さんとの日々は夢でそこに未来を求めたらいけない。
現実に戻るだけ、現実に。



何度か頭の中で呪文のように唱えると、私の周りの空気だけが急に冷たくなったように感じた。

「藤丸さん、私やっぱり、もう…」

一緒には暮らせない。



その一言が、とどめの言葉が出てこない代わりに、出てくるのは涙ばかり。


私はひとまず自分を落ち着かせようと大きく空気を吸い込んだ。
藤丸さんの顔なんて見ることが出来なくて、軽く目を閉じる。

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