お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~
「それでは、よろしくお願いいたします」
細身のスーツを着た男性は、丁寧に玄関先で一礼する。
保険のセールスマンかな?
男性の後ろ姿を眺めながら、想像していると彼は私の方に向かって歩き始める。
背はそれほど高くなく、長めの前髪を斜めに流した黒縁眼鏡のキリッとした男性は、私に気付いたようで、軽くお辞儀をする。
私もそれに合わせて軽くお辞儀をすると、彼は視線を私を頭のてっぺんから爪の先まで行ったり来たりさせた。
「もしかして、赤井琴理さんですか?」
「そうですけど、何か?」
不躾な視線を送る彼に、私も不躾な視線を返しながら返事をすると、私の不信感のようなものに気付いたのだろう。
「いえ、なんでも。失礼いたします」
小さくお辞儀をすると、彼は足早に去って行ってしまった。