お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~
「まず…、」
藤丸社長は、ふぅっと一息つくと、柔らかな物言いで顔をあげてくださいと私に声をかける。
恐る恐る顔をあげると、藤丸社長は私に向かって、目を細め優しく微笑んでいる。
「琴理さんは、先日までうちの会社が買収した会社の社員さんでしたね」
「はい」
私は小さく頷く。
「でも、今は社員でもない」
「はい」
買収を機にリストラされました、なんて言えないけれど、そこはご存知ですよね?
私は無言で視線を送ると、藤丸社長は私の言い分を理解したかのようにわずかに肩をすくめる。
「まず琴理さんは社員ではないので、僕はあなたにとって、社長でもなんでもありません。ですから、その呼び方はお辞め頂ければと。」
「はぁ…」
そう言って優しく微笑む藤丸社長、もとい藤丸さんの答えに私は、口をあんぐりさせてしまう。