お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~
「理由はそれだけですか?」
自分でもビックリするほど、いつもの調子で質問が口から出てしまう。
「…妻に子供が出来た」
「そうですか。わかりました」
私の口から出てきたのは、感情なんて含まない、平坦な言葉。
そっか。それなら仕方ない。
別れを告げたことに申し訳なさそうにしている桐谷課長を私の瞳に捉えながらも、不思議と涙も彼への愛だとか憎しみだとかいう言葉さえ口からは出てこなかった。
別れるときはきっと泣くんだろうな。
ずっとそう思っていたのに、いざその時を迎えてみれば涙さえを出てはこなかった。