お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~
その瞬間だった。
目の前にあったはずの美しい日本庭園の景色は消え、視界に現れたのは天井と、さっきまで豪華な懐石料理をさらに美味しそうに照らしていた照明。
それとともに、ジンジンと足のしびれが襲ってくる。
慣れない正座で姿勢も崩さずに長い時間座っていたせいだ、と思った時にはすでに遅かった。
倒れる、と覚悟した瞬間、これが走馬灯というのだろう、激しい後悔に襲われた。
「あぶねっ」
足は言うことをきかないし、ろくに受身なんて出来ないので畳に後頭部や背中が強く打ちつけられることを覚悟した。
それなのに、私はすっぽりと芳香なムスクの香りに包まれるのと同時に、打ちつけられた衝撃は想像よりもはるかに柔らかなものだった。