お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~
「まだ、次の仕事見つかっていないんでしょう?生活は保障するよ」
覗きこまれたままの姿勢のまま、目を細めて微笑みかける藤丸さん。
だけど、その瞳はいたって真剣で笑ってなんていないことにその時気付く。
「だから、そんな問題じゃないんです。」
恥ずかしさで消え入りそうな声しか出なかったけれど、私は精いっぱい言葉を絞り出す。
「じゃあ、大切な人でも出来たの?桐谷課長と別れた後に」
言葉を失った。目の前から色が消えた。
どうして初対面のこの人は、私と桐谷課長のことまで知っているのだと疑問が湧くよりも先に恐怖さえ感じてしまった。
「琴理さん、こんなことはフェアじゃない事くらい分かっているんだ。けれどね、お見合いするって決めた以上、相手の素性はある程度把握したいと思うし、結婚したいと僕が思った以上、どんな手段を使っても相手を振り向かせたいと思うんだ。」
「だからもう一度提案する。僕と3ヶ月間だけゲームをしよう。3ヶ月後、君に気持ちがないのなら、僕もスッパリ諦める」
このゲームに私が参加しないという選択肢は、藤丸さんには最初から存在しなかったのだ。
桐谷課長とのことを知られている以上、私には選択肢なんかないのだ。
私は、小さく頷くしかなかった。