お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~
かごの中に居ることは幸せですか?
 ◆◆

「それでは、よろしくお願い致します」

 

車の窓越しに両親が揃って、私の左側に座ってハンドルを握る彼に向かって頭を下げる。

彼は、にっこりとほほ笑んで、両親に会釈をすると静かに車を発進させた。

 

 

 

左隣に座る彼、藤丸さんにゲームをしようと提案されたお見合いした日から、2週間が経ち、とうとうこの日を迎えてしまった。

 

 

◆◆

「お互いを知るために同棲しようと思う」

 

2週間前、お見合いから帰るなり、そう言った私を両親はたいそう驚いた表情を見せたかと思うと、お母さんは嬉しそうにはしゃぎまわり、お父さんはなんだか複雑な表情を浮かべながら日頃飲まない日本酒をチビチビと飲んでいた。

 

 

同棲する場所は、都心にある藤丸さんのマンション。

たった3ヶ月だからと荷物も最小限に抑え、必要なものは宅配で送ることにした。

 

 

都心までは電車で2回乗り継ぎすれば、90分程度の距離。

旅行用のスーツケース片手に、マンションまで移動しようと考えていた。



それなのに引っ越し当日の早朝に、藤丸さんは黒光りしている高級外車のセダンで私の実家までご丁寧にお迎えだと言って現れたせいで、私は唖然とした。

 

 

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