お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~

「寂しいですか?」

 

出発してから数分、車に疎い私が内装までこだわりがあることが一目でわかる車内で流れる景色をぼんやり眺めていると、藤丸さんに声をかけられる。

 

「まぁ、多少は…」

 

 

寂しくないと言えば嘘になる。でも私が外を眺めていたのは寂しいだけが理由じゃない。

 

藤丸さんと何を話せばいいのか分からないのだ。

 

 

藤丸さんとはあのお見合い以来、会うのは初めて。



お互いに連絡先は交換したものの、住む所なんかの具体的な話は秘書の工藤さんという方が連絡してくれた。


ーーといっても、工藤さんの連絡も一方的だったけれど。

 

 

「帰りたくなったら、いつでも帰ればいい。ご両親や妹さんに会いたくなったらマンションに呼んでもいいんですよ。今生の別れではないんですから」

 

私の返事に優しい口調で答えた藤丸さんの横顔を思わず見つめた私は、その横顔がとても柔らかな笑みを浮かべていたので無意識に見惚れてしまった。

 

 

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