お見合い結婚～イケメン社長と婚前同居、始めます～

「家の中のものは、好きに使ってもらっていいから」

 

そう言いながら、私の左前方でスツールに座りコーヒーを飲む藤丸さんの姿はこのリビングに馴染んでいて、様になっている。

 

「それから、琴理ちゃんの部屋はあっちね。僕の部屋は廊下を挟んで向かいだけど、一緒に過ごしたくなったらいつでもどうぞ。」

 

リビングから見える位置にある廊下のドアを指さし、藤丸さんは冗談とも本気ともとれる口調のせいで急にこの状況を意識して緊張感が増してしまう。

 

それに藤丸さんのマンションに到着してから、藤丸さんは急にフランクな口調になったものだから、警戒感丸出しの私はどうしていいものかと戸惑ってしまって返事に困る。

 

 

「い、い、一緒に過ごすなんて、遠慮しますっ」

 

動揺が声になって現れてしまい、思わず声が上擦ってしまう。それを見逃さなかった藤丸さんは、楽しげに肩を震わせた。