お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~
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直属の上司である桐谷課長との関係が始まったのは3年前。
「琴理って名前、すごくかわいいと思う」
「そうですか?赤井琴理だなんて名前、大嫌いで」
「少なくとも僕は、素敵だと思ったよ」
仕事で大きなミスをしてしまった私を励まそうと食事に誘ってくれた桐谷課長は、瞳を揺らして優しく微笑んだ。
初めて男の人に名前を褒められた。
幼稚舎から小・中・高校・大学とエスカレーター式の地元の女子校に通った私には、男性と過ごす時間があったのは幼稚舎と、それから大学を卒業して、今の会社に就職してからのことで、その時まで恋愛経験なんて全くなくて、それが口説かれていたと知ったのは随分後になってからのこと。
当時の桐谷課長は、まだ営業課から移動になって、私が所属する総務課の課長になったばかり。
その頃はまだ独身で、食事の帰りにホテルに誘われて、一夜を共にしたのが始まりだった。