お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~
次の瞬間。


 私が次の言葉を発する前に、私は藤丸さんの胸の中に引き寄せられる。全身が藤丸さんの暖かさと芳香なムスクの香りに包まれている気がしてくる。

 

 

「琴理ちゃんごめんね」

左耳をくすぐる程の近さで聞く藤丸さんのバリトンボイスは苦悩にも近い感情が入っていた。


藤丸さんの身体を突っぱねて、腕の中から逃げ出そうと思えば簡単なのに、私はそれすら出来ないでいる。

 

 

「僕のわがままで、急に琴理ちゃんの環境が変わってしまったから、僕なりに気を遣ったんだんだけど、それで琴理ちゃんが辛い思いをしているなんて気がつかなかったんだ。」


藤丸さんがそんな事考えてくれていたなんて私も思いもしていなかった。

私は藤丸さんの腕の中で次の言葉を待つ。

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