その男、猛獣につき
猛獣使いの受難
「えぇえぇえぇえーーー‼」
お盆休みが間近に迫ったある日の夕方、教務室には、私の大絶叫が響き渡る。
「嫌、嫌‼ 絶対、嫌‼ 無理無理。しげちゃん先生どうにかしてぇ。」
白髪混じりのしげちゃん先生は、私の大絶叫を聞いて冷たい視線を投げ掛ける他の先生たちに私の代わりにペコペコ頭を下げている。
「まぁまぁ、有田。そんな顔するな。」
涙目の私の顔を覗きこみ、しげちゃん先生は、優しく微笑みかける。
「有田 舞花。お前なら、大丈夫。だから、お前が選ばれたんだから……。」
そう言って、しげちゃん先生は私に最上級のスマイルを見せた。
そのスマイルが涙でぼやけるのを必死に堪えて、私はしげちゃん先生を睨んで、もう一度絶叫した。
「嫌だぁぁぁ。」