その男、猛獣につき

私のテンションの上昇が分かったようで、

「興梠も有田のその単純さというか、素直さがいいんだろうな」

しげちゃん先生はそう言って全てを知っているというような顔をしてニヤリと笑う。

 


「興梠が、『有田に振り回されてる』なんて言って、珍しく泣きごと言ってたぞ」

「振り回しているつもりなんかないですよ!!!むしろ私が…」

そこまで言って、私は押し黙った。




むしろ私の方が興梠先生の言葉や態度に一喜一憂して、振り回されてる気がする。


そんな事、しげちゃん先生に言えなくて、私は急に恥ずかしくなってしまった。


「それより、しげちゃん先生‼私、実習で実習先の病院のリハビリ室に泊まり込みなんて聞いてなかったですよ~」


話をはぐらかそうと私は、早口で捲し立てる。

しげちゃん先生は、そうだったけ、なんて軽く私をあしらう。


「もう。」
私がむっとした顔をすると、しげちゃん先生は、まぁまぁと私を宥める。

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