その男、猛獣につき
★☆★

「じゃあ、有田。残りの実習期間、しっかり頑張るんだぞ。」

「はい」

しげちゃん先生は私に優しい笑顔を見せたから、わたしも笑顔を返して返事をする。



私の面談もあっという間に終わり、私と興梠先生は、玄関フロアまでしげちゃん先生を見送るために出てきていた。



「興梠先生、それでは有田のことよろしくお願い致します」

「やめてよ、しげちゃん」

私への挨拶を早々に終えたしげちゃん先生は、私の隣に並んでいた興梠先生に向かって挨拶をする。

急に改まったしげちゃん先生に苦笑いを浮かべながら、返事をする。

 



興梠先生の横顔を覗くと、身なりはいつものびしっときめた興梠先生なのに、表情はまるで少年のよう。

 

興梠先生もしげちゃん先生の前では、やっぱり学生のままなんだ。

 

そんなことを考えてしまって、つい頬がゆるんでしまう。

 

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