その男、猛獣につき
敦也さんに尋ねられた時だった。
私が悩んだり、返事する間もない程、ほとんど同じタイミングで駐車場に見覚えのある黒い四駆が猛スピードで入ってくる。
「ほら、きたきた」
敦也さんは、その車を見ながら、楽しそうに笑っている。
バタン―――
勢いよく車から出て、ドアを閉めるのは、いつも病院で見るときのように髪の毛をかっちりと整えた興梠先生。
いつもと違うのは、勉強会に行っていたせいかスーツ姿で。
すごいスピードで先生は、こちらに向かって走って、近づいてくる。