その男、猛獣につき

「お疲れさ…」

「敦也、どういうことだよ?」

興梠先生は、呑気にアイスを食べていた私と敦也さんの所まで近づいてくると、私の挨拶にも耳を貸さず、敦也さんに問いかける。

 

私は何の事だかさっぱりわからない。


けれど、ワイシャツのボタンを1つ緩め、息を切らしている先生が、敦也さんに投げかけた言葉には、明らかに怒りが滲み出ている。

 

敦也さんは、そんな興梠先生の様子に怯むことなく涼しげな顔をしている。

「どういうことって?まぁ、そういう仲ってことだよ。ねぇ、舞花?」

 

ま、舞花っていきなり呼び捨てですか?
あっ、敦也さん!!!

 

敦也さんの涼しげな態度で言い放った一言に言い返そうとしたけれど、明らかに怒っている興梠先生を前に私は何も言えず、敦也さんに目で訴える。

 

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