その男、猛獣につき


「それから、夜は通用口から出入りは自由。」


さっきから、話が急過ぎてなんだか目眩がする。


「先生、コンビニはありますか?」


「コンビニは、3㎞程先にある。スーパーもコンビニの近くにある。ファミレスは5㎞位あるかもな。」


聞いた私がいけなかったのかもしれない。目眩がさらにひどくなってきた。


「有田、そういえば移動手段は?」




えっ。もういきなり苗字呼び捨てですか。
少しだけ不服に思いながら

「徒歩です。」


先生のぶっきらぼうに負けない位のぶっきらぼうで答えた。


「はっ?しげちゃんに免許持ってる学生って言ったんだけど。」


先生は少し困ったら表情を見せた。

「免許は、持ってます。」

「じゃぁ、レンタカー手配しておく。」

先生は早々とポケットから電話を取り出して、操作を始める。
その素早い行動に焦ったのは私。


「先生、非常に言いにくいのですが、私ペーパードライバーなんです」


消え入るような声で言った私の声に、先生は、一瞬驚いた顔をしたけれど、すぐに冷たく睨んだ。

< 13 / 328 >

この作品をシェア

pagetop