その男、猛獣につき
「それから、夜は通用口から出入りは自由。」
さっきから、話が急過ぎてなんだか目眩がする。
「先生、コンビニはありますか?」
「コンビニは、3㎞程先にある。スーパーもコンビニの近くにある。ファミレスは5㎞位あるかもな。」
聞いた私がいけなかったのかもしれない。目眩がさらにひどくなってきた。
「有田、そういえば移動手段は?」
えっ。もういきなり苗字呼び捨てですか。
少しだけ不服に思いながら
「徒歩です。」
先生のぶっきらぼうに負けない位のぶっきらぼうで答えた。
「はっ?しげちゃんに免許持ってる学生って言ったんだけど。」
先生は少し困ったら表情を見せた。
「免許は、持ってます。」
「じゃぁ、レンタカー手配しておく。」
先生は早々とポケットから電話を取り出して、操作を始める。
その素早い行動に焦ったのは私。
「先生、非常に言いにくいのですが、私ペーパードライバーなんです」
消え入るような声で言った私の声に、先生は、一瞬驚いた顔をしたけれど、すぐに冷たく睨んだ。