その男、猛獣につき
先生は、

まじか、どうするかなぁ。


なんて一人で呟きながら、少し考えるそぶりを見せた。


「それなら、自転車調達してくる。明日にでも駐輪場に置いておく」

 

「ありがとうございます」

 

この夏の熱い時期に自転車が移動手段になるなんて…

 



病院に寝泊まりに加えて、想像していた生活からどんどんかけ離れていったせいか、私の思考は完全に停止してしまった。

 

 

それでもどうにかお礼を伝える。

 

「じゃあ明日は、もう実習服に着替えて、始業前にここで。スーツも暑苦しいだけだから、実習服以外は私服で。」

 

 

先生は 、伝えることだけ伝えると

「実習のオリエンテーションは、明日する。じゃあ、後はご自由に」

 

そう言ってリハビリ室の出入り口に向かって歩きだした。


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