その男、猛獣につき
「有田!!!」
先生に声を掛けられて、私は咄嗟に振り返る。
期待していたわけではなかったけれど、やっぱり先生は笑っていない。
感情を全て消したような表情をしていた。
「有田、さっきの言葉は、忘れろ。俺も、忘れるから」
感情を消したような表情の隙間から、少しだけ先生が傷ついているような、悲しい表情を覗かせる。
それでも必死に感情を表さないような冷たい口調で喋る先生。
「…出来ません」
実習中、嫌だとか、出来ないとか抵抗したことなんてこの3週間なかった気がする。
それでも自分の気持ちを忘れることなんて出来ないと思って、咄嗟に抵抗して見せた。