その男、猛獣につき
「主税も舞花ちゃんと同じように悩んでいると思うよ。まぁ、さっき主税と電話で話したんだけどね。」
敦也さんと別れた後の私と先生の経緯を簡単に説明し終わると、敦也さんは私に優しく諭す。
「実習生とバイザーの恋愛はタブーだからね」
敦也さんの言葉が胸に突き刺さる。
「分かってます。だけど…」
「だけど、好きになってしまったんでしょ?」
私が言いかけた言葉を敦也さんが簡単に言葉にしたから、私は、はい、と小さく返事をする。
「今は、待つしかないと思うよ。どんなに気持ちが大きくなっても、実習が終わるまでは。」
「主税も、まさか舞花ちゃんに告白されるなんて思ってなかったから、戸惑ったんだと思うよ。あいつ、ああ見えて不器用だから」
敦也さんの言葉に啜り泣きをしながら、相槌をうつ。