その男、猛獣につき
「今日は特に荒れていたわね…。うちの猛獣」
夕方の業務終了間際、いつものように竹内さんと嶋本さんと3人でホットパック用のタオルを片付けながら、スタッフルームに居る興梠先生を見ながら、竹内さんが呟く。
「本当ねぇ、何かあった?有田ちゃん。」
嶋本さんが私に囁く。
何かあった?って私に聞かないで頂きたい。
興梠先生が荒れている原因は、私のせいなのだから。
「今日の2人は、かなり怪しいわね」
「有田ちゃんが実習始まってから、興梠先生、かなり穏やかになってると思っていたんだけどねぇ」
「有田ちゃんは、猛獣使いだって思ってたんだけど…。」
うふふ…なんてにこやかに笑いながら、リハビリ助手の2人、改め噂大好きおばちゃん2人組は私の存在なんて蚊帳の外。
勝手に話を進めている。