その男、猛獣につき
1人には広すぎるリハビリ室。
ブラインドは閉められているけれど、まだ夏日の昼間とあって、照明もつけられてはいないのに部屋の中は十分明るい。
それなのになんだか急に心細くなってしまって、私は先生の背中に向かって声をかけた。
「先生っ!!」
「何?」
また向けられる冷たい視線。
それでも今度は先生の必殺技の蛇睨みは効かなかった。
そうだよね。
もう帰りたいよね。
せっかくのお休みの日に、職場で見ず知らずの実習生相手に面倒くさいよね。
そう思ったら、呼びとめたことがなんだか申し訳なく思ったこともあって、小さくなりながら尋ねた。