その男、猛獣につき
「あっ、あの、お化けは?」
「はぁぁあ?」
完全に呆れた声と、恐る恐る顔を見れば呆れた表情をしている。
「そんなもん、戦え。それとも向こうで、Gと戦うか。」
「えーーー!!!」
《冷徹の興梠先生》に向かって私は絶叫した。
先生は少しだけ口角をあげて、涼しく整った顔だちを少し崩して笑った顔をしたかと思うと、
「それとも、俺がここに一緒に泊まってあげてもいいけど?」
意地悪そうな笑顔を浮 かべて、言い放ったものだから、私は何も言葉を返すことが出来ずに、口をパクパクとさせるだけで精いっぱいだった。
「じゃあ、頑張って、お化けと戦えよ」
私の反応を楽しんだような先生は、涼しげに、
「お疲れー」
と言いながらリハビリ室を後にした。
絶対、しげちゃん先生に言いつけてやる。
セクハラのバイザーだったって言いつけてやるっ。
先生の背中を見送りながら、私はお化けに対する恐怖より、その気持ちが勝っていた。
その日、私の8週間の始まりのゴングが響いた。