その男、猛獣につき
せっかく先生への気持ち、リセットしようって決めたのに……。


そんな想いがどこからともなく沸々と沸き上がってきて、冷静さが戻って来た私は、いつの間にか握りしめていた先生の両腕に力をこめ、先生を押しやる。



明らかに困惑した表情を浮かべる先生の顔を見つめることなんて出来なくて、私は俯いて下唇を噛み締める。


「せっかく……、せっかく、諦めようって決めたのに。」

「有田?」



「こんなことされたら、期待しちゃいます。」

「…………」

「勘違いさせないで……」

その後は言葉になんて出来なくて。

堰を切ったように涙が溢れ出てくる。

< 196 / 328 >

この作品をシェア

pagetop