その男、猛獣につき
「主税には珍しく弱気だな。」
敦也が鼻で笑う。
「実習中の学生の恋愛ってそんなもんだろう?切羽詰まった状況での恋愛なんて、実習が終わってしまって日常生活に戻れば、きっと有田の気持ちも…」
「だったら、優しくなんてするなよ!!そんなの余計に舞花ちゃん傷つけるだろう」
敦也が珍しく声を荒げたので、思わず目を見開いてしまった。
「…俺も頭では同じこと思ってんだよ。だけど、有田から目を離せなくて。」
思わずため息が出る。
「近づこうと思っても、有田から《先生》って呼ばれると。……やっぱり俺らは実習生とバイザーの関係だって思い知らされる。」
「百戦錬磨の猛獣も、そんなこと冷静に考える猛獣になったってことじゃねぇの?」
敦也は穏やかに笑う。
「主税も、葛藤してるんだな」
そう呟く敦也を目の前に、なんだか恥ずかしくなってしまう。
「お持ち帰り専門の怪獣にそんなこと言われたくねぇよ」
俺は冷たく視線を向け、残っていたビールを飲み干した。